:修理・改造

先日のコンサートの時にパワーアンプに障害が発生したことは、この間書いたとおりだ。
その後、パワーアンプはコンサートの翌週火曜日11日の夜修理・改造した。
そのときに写真を撮らなかったので、図面を参照しながら、簡単に説明する。

故障発生時の回路

回路自体に致命的な欠陥があるわけではないが、あまりよろしくない構成である。

図1:故障発生時の入力段回路(クリックすると拡大します。)
このように入力に100kΩが並列で負荷となっているところに、さらに500kΩ(A)のボリュームとその中点にさらに並列に500kΩが入っている。
まぁ、入力に出力するプリアンプ側から見ると固定抵抗があるので、負荷が変化しなくていいとはいえる。
しかし、このような回路にすると、きちんとしたAカーブでのボリュームコントロールにはならない。つまり、ボリュームコントロールに伴って入力抵抗がS字カーブを描くように変わってしまうのである。しかも、結局、直流的に入力とグリッドが直結になるので、特に外乱雑音とボリュームのガリが直接出力に影響を与えてしまう。
従って、この回路でやらなくてはならないことは2つだ。
この間も書いたがボリューム交換と入力回路の改造だ。

ボリューム交換

現状の不良となっているボリュームを交換する。アルプスの小型ボリューム500kΩのAカーブに変更する。

入力回路

<当初変更案>
ジャックトップ→1MΩ固定→0.47μF(東一ビタQかOrangeDrop)→500kΩ(A)VR→グリッド
当初はこうしようと思っていたが、やはり、ボリュームの接点のちょっとした接触不良(ガリ)でグリッドが安定しない可能性があるので、以下のようにすることとする。
<最終案>
ジャックトップ→500kΩ(A)VR→0.47μF(OrangeDrop)→500kΩ(グリッドリーク抵抗)→グリッド
このようにすることによって、T型のローパスフィルタになり、入力インピーダンスもまぁまぁ安定する。

故障発生時の実体配線模式図

実際に故障が発生したときの内部写真を撮っておけばよかったが、直してしまってからそれに気がついた。
ということなので、模式図を書いてみた。これでもかなりわかるはずだ。

図2:故障発生時の入力段実体配線模式図(クリックすると拡大します。)
これを見るとわかるように、入力ジャックのチップ部分が100kΩが並列になっているだけでオープンになっているのがわかる。
従って、上記2点の改造に加えて、もう1点改造が必要である。

ジャック配線

ジャックのトップのクローズ接点側とジャックのアースを接続する。
単純に線材で2カ所ハンダ付けするだけだ。

最終回路図と実体配線

これらを踏まえて最終的に決めた回路が以下の通りである。

図3:最終的な入力段回路(クリックすると拡大します。)
これを配線したものの模式図がこれである。

図4:最終実体配線模式図(クリックすると拡大します。)
このように、グリッドに直結されていた入力がコンデンサで分離され、あわせてグリッド抵抗が固定抵抗になるため、雑音面でも有利になっていると思われる。
とにかく、かなり入力段の動作が安定したはずだ。

実際の配線・修理

以上を実際に配線してみた。
子供達がいろいろちょっかいを出すので、2時間ほどかかってしまったが、なんとか配線できた。
一番苦労したのは、そもそもの配線をはずす作業であるが、そのほかには溶けた古いハンダの回収やひげと呼ばれる細い複線の処理ミスなどに細心の注意を払った。
実際に一番悩んだのは、ボリュームの取付穴である。
それまでのボリュームは1Wタイプだったので、かなり大きい。しかも取り付けねじ穴はアメリカンタイプの推定8.5mmφだ。それに対してアルプスの小型ボリュームは1/4Wタイプで、穴も推定6.5mmφだ。
止まるかどうか心配したが、やってみると何のことはない。穴に食い込む形にワッシャが変形し、かえって前に比べてもガンともしないほどしっかりと留まった。
ということで、実際の配線の写真がないのが残念だ。

調整・火入れ

調整は、何度も入念に目視確認したが、まぁ、この程度で誤配線や天ぷらがあってはいけない。特に何も見あたらないので、最後に回路を色塗りして確認してOKとする。
実際にアンプに火を入れてみるが、何事も起こらない。よしよし。
一度落として、プリアンプとスピーカをつなぎ、再度火入れ。
スピーカからかすかにハムが聞こえるが、当初と比べてもかえって少ないくらいだ。
ボリュームを上げるとハムを増幅した音が聞こえる。
ボリュームを最小から最大まで上げてみる。プリアンプの出力を絞っていれば、抵抗ヒスノイズだけが若干増えるだけで、いたって順調である。
やはり、ボリュームが悪かったのだ。ガリは一つも出ない。やったぁ!

音出し

最後に実際にベースをつないで音を出してみる。
おぉ。いい感じだ。
思った通りに音が大きくなったり小さくなったりする。(ある意味当たり前なのだが。)
やっぱ、ちゃんとした状態のアンプはいいね。
プリアンプも非常にハムが少なくなったので、とてもいい感じに練習ができそうだ。
いい音なので、どうしても音が大きくなりがちなのがというところがまぁねぇ・・・


ということで、パワーアンプ修理・改造記完である。